関西の医療経営コンサルタント M.M.C. 病院経営・診療所経営・歯科医院経営・介護事業経営のご相談をお受けいたします。
関西一円、大阪府・京都府・兵庫県・奈良県・和歌山県・滋賀県はもちろん、それ以外の地域の方もご相談下さい。医師・歯科医師で開業をお考えの先生、ぜひお問い合わせ下さい。mmc-oh

TOP > コラム > 医療経営最新情報 平成26年度診療報酬…

医療経営最新情報

平成26年度診療報酬改定に係る基本的考え方

2013.12.11

社会保障審議会医療保険部会で平成26年度診療報酬改定の基本方針がまとまりました

 

Ⅰ平成26年度診療報酬改定に係る基本的考え方

 

1.基本認識

ア、我が国の医療については、国民皆保険の下で、医療関係者の献身的な努力、保健事業に係る保険者の取組、公衆衛生の向上等により、世界トップレベルの長寿、新生児死亡率や妊産婦死亡率の低さ等を実現してきた。また、医療費の対GDP比は、OECD諸国の中で中位にあり、世界一の高齢化水準に鑑みれば、決して高い水準ではなく、世界に高く評価されるコストパフォーマンスを達成してきた。今後の超少子高齢社会においても、必要な医療は保険診療で行われるべきという基本理念の下、国民皆保険を堅持し、国民の健康を守っていく必要がある。

イ、しかし、今後の更なる高齢化の進展により、医療ニーズが慢性疾患を中心とするものに変化しながら増大し、医療の内容が変わっていく中で、引き続き国民が安全で質の高い医療を受けられるようにするためには、国民の理解を得て、医療提供体制の再構築に取り組み、限られた医療資源を医療ニーズに合わせて効果的にかつ無駄なく活用できるようにすることが必要である。

ウ、このため、社会保障・税一体改革においては、消費税率を引き上げ、その財源を活用して、医療サービスの機能強化と、同時に重点化・効率化に取り組み、2025(平成37)年に向けて、医療提供体制の再構築、地域包括ケアシステムの構築を図ることとされている。具体的には、診療報酬改定、補助金の活用、医療法改正等により、

・急性期病床の位置付けを明確化し、医療資源の集中投入による機能強化を図るなど医療機関の機能分化・強化と連携を推進

・医療機関の連携、医療・介護連携等により必要なサービスを確保しつつ、一般病床における長期入院の適正化を推進

・在宅医療の拠点となる医療機関の役割を明確化するなど、在宅医療を充実等に取り組むことが示されている。

エ、団塊の世代が75歳以上となる2025(平成37)年に向けて、急性期から回復期、慢性期、在宅医療まで、患者が状態に合った適切な医療を受けることができるよう、本年8月6日に取りまとめられた社会保障制度改革国民会議の報告書も踏まえ、患者の負担にも留意しつつ、医療機関の機能分化・強化と連携を進め、病床の役割を明確化した上で機能に応じた充実を行うとともに、急性期を脱した患者の受け皿となる病床、主治医機能、在宅医療等を充実していかなければならない。

オ、診療報酬改定においては、医療法改正による対応に先駆けて、平成26年度診療報酬改定において、入院医療・外来医療を含めた医療機関の機能分化・強化と連携、在宅医療の充実等に取り組む必要がある。

消費税引上げ財源を医療の機能強化に充てるに当たっては、国民の理解が得られるよう、医療の機能強化とともに、医療の効率化に取り組むべきである。

 

2.重点課題

(1)医療機関の機能分化・強化と連携、在宅医療の充実等

ア、平成26年度診療報酬改定においては、上記のような基本認識の下、社会保障・税一体改革において、消費税率を引き上げ、その財源を活用して、医療の機能強化と、同時に重点化・効率化に取り組むこととされている中で、入院医療・外来医療を含めた医療機関の機能分化・強化と連携、在宅医療の充実等に重点的に取り組むべきである。

イ、医療機関の機能分化・強化と連携に当たっては、性急な措置によって医療現場が混乱し、患者が必要な医療を受けられない事態が発生しないよう、急性期を脱した患者の受け皿となる病床を整備し、退院した患者を支える在宅医療等を充実させるとともに、医療従事者の適切な確保に留意しながら、段階的かつ着実に進める必要がある。

また、現在別途検討が行われている病床機能報告制度とできる限り整合性が図られるよう、留意しながら検討を進めるべきである。

ウ、患者の立場からすれば、どのような状態であっても、患者の理解を得るための適切な説明が行われ、状態に応じた適切な医療を受けることができるということが重要なのであり、そのような視点に立って、病院、医科診療所、歯科診療所、薬局、訪問看護ステーション、そして介護事業所等に至るまで、患者を支える機能が円滑に連携していなければならない。地域においてこれらの機能が地域の実情に応じたネットワークを構築し、地域全体で地域の医療需要に応えていく「地域完結型」の医療提供について、それを促進するような評価が必要である。また、このとき、医療従事者の確保が必要であり、医療従事者の負担軽減とともに、チーム医療の推進に引き続き取り組むべきである。

エ、医療機関の機能分化・強化と連携に当たっては、診療報酬と補助金の活用が考えられる。診療報酬は診療行為や入院等への対価の支払いであり、私的医療機関が多い我が国では、診療報酬により、医療機関の自発的行動や経営努力を促すことが好ましいが、行き過ぎたインセンティブとならないよう注意する必要がある。他方、補助金は地域の実情に応じた活用が可能であるが、対象や金額が限定される傾向があり、例えば地域医療再生基金では、主に五疾病五事業等に活用された結果として公立病院等に多く配分されている。診療報酬と補助金の特性を考慮しながら、適切に組み合わせて対応することが適当である。

オ、また、効率化余地がある分野については適正化を推進していくことが患者負担や保険料への影響等の観点からも重要であり、引き続き検討していくことが必要である。

 

3.改定の視点

(1)充実が求められる分野を適切に評価していく視点

 がん医療、認知症対策など、国民が安心して生活することができるために必要な分野を充実していくことが重要であり、「充実が求められる分野を適切に評価していく視点」を改定の視点として位置付けることとする。

(2)患者等から見て分かりやすく納得でき、安心・安全で質の高い医療を実現する視点

 患者の立場から、必要な情報に基づき、納得して医療に参加していけること、また、生活の質という観点も含め、患者が心身の状態に合った質の高い医療を受けられることが重要であり、「患者等から見て分かりやすく納得でき、安心・安全で質の高い医療を実現する視点」を改定の視点として位置付けることとする。

(3)医療従事者の負担を軽減する視点

 医療従事者の厳しい勤務環境が指摘されている中、勤務医、看護職、リハビリテーション専門職等の医療従事者の負担を軽減することが重要であり、「医療従事者の負担を軽減する視点」を改定の視点として位置付けることとする。

(4)効率化余地がある分野を適正化する視点

 医療費は国民の保険料、公費、患者の負担を財源としており、厳しい医療保険財政の下、効率化余地のある分野は適正化していくとともに、患者自身の医療費の適正化に関する自覚も重要であり、「効率化余地がある分野を適正化する視点」を改定の視点として位置付けることとする。

 

平成26年度診療報酬改定の基本方針

 

1.重点課題

(1)医療機関の機能分化・強化と連携、在宅医療の充実等

①入院医療

ⅰ高度急性期・一般急性期について

ア、7対1入院基本料の病床が急速に増え、最も多い病床となっているが、急性期病床に長期療養患者も入院するなど、患者の状態に応じた医療提供、療養環境、医療費負担となっていないという指摘がある。患者が状態に応じて適切な医療を受けられるよう、急性期病床における患者像を適切に評価することが重要である。

イ、また、急性期の患者の早期退院・転院や、ADL(日常生活動作)低下等の予防のため、早期からのリハビリテーションの実施や退院・転院支援の充実等も重要である。

ウ、このため、高度急性期及び一般急性期を担う病床の機能の明確化とそれらの機能に合わせた評価を行う観点から、急性期病床の患者像の検証を基に、以下の事項について検討を行う必要がある。

・急性期病床の担う機能の明確化を行い、高度急性期及び一般急性期を担う病床の機能強化

・重症度・看護必要度の見直し等による、患者の状態に応じた医療の提供

・入院早期からのリハビリテーションや退院・転院支援の推進

・退院・転院に係る連携の強化

・急性期病床の平均在院日数の短縮等

ⅱ慢性期(長期療養)について

ア、長期療養患者については、適切な環境で療養を行うことが重要である。

イ、ⅰのアのような指摘がある中で、長期療養患者の受け皿を確保し、急性期病床と長期療養を担う病床の機能分化を図る観点から、いわゆる社会的入院が発生しないように留意しつつ、以下の事項について検討を行う必要がある。

・急性期病床における長期入院患者の評価の適正化

・長期療養を担う病床の急性期等との連携強化、受入体制の充実等

ⅲ回復期(診療報酬上の亜急性期入院医療管理料等)について

ア、超少子高齢社会では、人口構成が変化し、慢性疾患を有する高齢者が増えることから、高度急性期医療よりも地域に密着した回復期(診療報酬上の亜急性期入院医療管理料等)の医療ニーズが増加すると見込まれる。また、急性期を脱した患者は、できるだけ早く適切な療養環境の下で、集中的なリハビリテーション等を受けることにより、早期の在宅復帰・社会復帰を目指すことが重要である。急性期病床では、急性期を脱した患者の転院先がなくて見つからずに、次の救急患者を受け入れられない状況もあり、急性期後の病床等の充実が求められる。

イ、医療機能に着目した診療報酬上の評価を行う観点から、回復期リハビリテーション病棟との機能の違いを踏まえつつ、例えば、急性期病床からの患者の受入れ、在宅・生活復帰支援、在宅患者の急変時の受入れなど、診療報酬上の亜急性期入院医療管理料における患者像や機能を明確化し、回復期(診療報酬上の亜急性期入院医療管理料・回復期リハビリテーション病棟入院料等)の病床の機能に応じた評価について検討を行う必要がある。

他方、在宅患者の急性増悪には急性期病床が対応すべきであり、また、亜急性期という表現の中で急性期と回復期を含むと非常に分かりにくいため、病期に応じて報告する病床の区分に合わせ議論を整理すべきという意見があった。

ⅳ地域特性について

ア、医療資源の少ない地域では、一つの病院が複数の機能を担うことが必要な場合もあり、平成24年度診療報酬改定において、地域に配慮して入院基本料等で一定の要件を緩和した評価が行われたが、そのような地域の実情に配慮した評価のあり方について、患者の負担にも留意しつつ、検討する必要がある。

ⅴ有床診療所における入院医療について

ア、有床診療所については、病院からの早期退院患者の受入れ機能、在宅患者の急変時の受入れ機能、在宅医療の拠点機能、終末期医療を担う機能、専門医療を担う機能等を有している。

イ、地域包括ケアシステムの構築を目指していく中で、有床診療所の評価について検討を行う必要がある。

 

②外来医療について

ア、高齢化がさらに進展する中で、まずは身近な主治医を受診し、必要に応じて大病院や専門病院を紹介してもらうとともに、ある程度回復し、又は病状が安定したら、主治医に逆紹介される体制を整備することが重要である。

イ、複数の慢性疾患を持つ患者に適切な医療を提供しつつ、外来医療の機能分化・連携を更に推進するため、以下の事項について検討を行う必要がある。

・診療所や中小病院における主治医機能の評価

・大病院の専門外来の評価

・大病院の紹介外来を更に推進する方策等

 

③在宅医療について

ア、一人暮らしや高齢者のみの世帯でも住み慣れた地域にできるだけ長く暮らせるように、地域ごとに地域包括ケアシステムを構築することが重要である。主治医を中心として、病院、医科診療所、歯科診療所、薬局、訪問看護ステーション、介護事業所等が連携し、地域で急変時の対応や看取りを含めた在宅医療を提供できる体制を構築する必要がある。

イ、このため、在宅医療を担う医療機関の量の確保と、患者のニーズに対応した質の高い在宅医療の提供を推進するため、介護報酬との連携に留意しつつ、以下の事項について検討を行う必要がある。

・看取りを含め、在宅療養支援診療所・病院の機能強化

・在宅療養支援診療所・病院以外の医療機関による在宅医療の推進

・24時間対応、看取り・重度化への対応など、機能に応じた訪問看護ステーションの評価、訪問看護ステーションの大規模化の推進

・在宅歯科医療の推進

・在宅薬剤管理指導の推進

・訪問診療の適正化等

 

④医療機関相互の連携や医療・介護の連携によるネットワークについて

ア、限られた医療資源の下、急性期から在宅医療、介護まで、患者がどのような状態であっても、状態に応じた療養環境で適切な医療を受けることができるよう、地域ごとに患者の立場に立った地域包括ケアシステムを構築するため、地域の実情に応じた「地 域完結型」の医療のネットワークを構築する必要がある。こうしたネットワークにおいては、患者は状態に応じて適切な医療機関や施設、在宅等のサービスを受けられ、状態の変化によりサービスが変わる場合においても、安心して円滑に次のサービスを受けることができるよう、連携先の紹介・確保、連携元と連携先での情報共有、患者の理解を得るための適切な説明等が行われるようにしなければならない。

イ、診療報酬においては、これまでも、地域連携パスを活用した医療機関の連携、救急医療における後方病床の患者の受入れ、入院中の多職種による退院指導、ケアマネジャーとの連携等の評価を行ってきた。医療機関の機能分化・強化と連携や医療・介護の連携をさらに推進するため、病院、医科診療所、歯科診療所、薬局、訪問看護ステーション、介護事業所等のネットワークにおいて、患者を支えるこれらが協働して機能を発揮し、患者の状態に応じた質の高い医療を提供すること、病院から在宅への円滑な移行や、医療と介護の切れ目のない連携を図ることに対する評価について検討を行う必要がある。

 

2.改定の視点

(1)充実が求められる分野を適切に評価していく視点

ア、我が国の医療において、充実が求められる分野については、それを適切に評価していくことにより、国民の安心・安全を確保することが重要であり、このため、以下の事項について検討を行う必要がある。

・緩和ケアを含むがん医療の推進

・精神病床の機能分化、自殺予防等の観点から、精神疾患に対する医療の推進

・若年性認知症を含む認知症への対策の推進

・救急医療、小児医療、周産期医療の推進

・在宅復帰を目指したリハビリテーションの推進

・口腔機能の維持・向上を図るとともに、生活の質に配慮した歯科医療の推進

・かかりつけ薬局機能を活用し、患者個々の薬歴を踏まえた的確な投薬管理・指導の推進

・手術等の医療技術の適切な評価

・医薬品、医療機器、検査等におけるイノベーションの適切な評価等

 

(2)患者等から見て分かりやすく納得でき、安心・安全で質の高い医療を実現する視点

ア、患者の視点に立った質の高い医療の実現のため、患者等から見て、受けた医療や診療報酬制度を分かりやすくするための取組等を継続させていくことが重要であり、このため、以下の事項について検討を行う必要がある。

・医療安全対策等の推進

・患者に対する相談指導の支援

・明細書無料発行の推進

・診療報酬点数表の平易化・簡素化

・入院中のADL(日常生活動作)低下の予防

・患者データの提出等

 

(3)医療従事者の負担を軽減する視点

ア、医療従事者の厳しい勤務環境が指摘されている中、勤務医、看護職、リハビリテーション専門職等の医療従事者の負担を軽減することが重要であり、このため、以下の事項について検討を行う必要がある。

・医療従事者の負担軽減の取組

・救急外来の機能分化の推進

・チーム医療の推進等

 

(4)効率化余地がある分野を適正化する視点

ア、厳しい医療保険財政の下、今後医療費が増大していくことが見込まれる中で、効率化余地がある分野については適正化を推進していくことが患者負担や保険料への影響等の観点からも重要であり、このため、以下の事項について検討を行う必要がある。

・後発医薬品の使用促進

・長期収載品の薬価の特例的な引下げ

・平均在院日数の減少、いわゆる社会的入院の是正

・医薬品、医療機器、検査等の適正な評価

・大規模薬局の調剤報酬の適正化等

 

消費税率8%への引上げに伴う対応

 

ア、平成26年4月から消費税率8%への引上げが予定されているが、これに伴い、医療機関等に実質的な負担が生じることのないよう、消費税率8%への引上げ時には、診療報酬とは別建ての高額投資対応は実施せず、診療報酬改定により対応することとすべきである。

イ、また、診療報酬による対応においては、医療経済実態調査の結果等を踏まえ、基本診療料・調剤基本料への上乗せによる対応を中心としつつ、個別項目への上乗せを組み合わせる形で対応することを基本とし、この消費税対応分が明確になるよう配慮すべきである。

 

将来を見据えた課題

 

ア、超少子高齢社会の医療ニーズに合わせた医療提供体制の再構築、地域包括ケアシステムの構築については、直ちに完成するものではなく、平成26年度診療報酬改定以降も、引き続き、2025(平成37)年に向けて、質の高い医療が提供される診療報酬体系の在り方の検討も含め、医療機関の機能分化・強化と連携、在宅医療の充実等に取り組んでいく必要がある。

イ、その際には、官民の役割分担や連携も踏まえ、改正医療法に位置付けられる病床機能報告制度の運用状況や地域医療ビジョン等の取組と連携を図りながら、地域の実情に応じて、地域全体として、必要な医療機能がバランスよく提供される体制が構築できるよう、検討していく必要がある。

ウ、また、医療分野のイノベーションの進展によって、より高い治療効果等が期待される医療技術が選択できるようになる一方で、費用の大きな医療技術の中には、必ずしも治療効果等が十分に高いとは言えないものがあるという指摘がある。これらの課題も踏まえ、医薬品、医療機器等の医療技術の費用対効果評価について検討を行っていく必要がある。

エ、さらに、「地域完結型」の医療を提供していく中で、ICTを活用して、病院、医科診療所、歯科診療所、薬局、訪問看護ステーション等における医療情報の共有を推進し、より円滑な連携を図っていく必要がある。

オ、このほか、保険医療機関・保険薬局の医薬品購入の未妥結状況への対応、医療機関等の実態についてのより適切な把握、厳しい状況にある診療科の評価等についても検討を進める必要がある。